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在職老齢年金見直しと高齢者雇用|中宮先生によるお役立ちコラム【2026年6月号】

更新日: コラム

在職老齢年金の支給停止基準の見直しが行われました。
これは、単なる年金制度の調整ではなく、65歳以降も働くことが当たり前になる中で、高齢者の積極的な活用の促進という社会的要請にどのように応えていくかという経営課題でもあります。

在職老齢年金とは

在職老齢年金とは、働きながら老齢厚生年金を受給する人について、一定以上の賃金収入がある場合に、老齢厚生年金の一部または全部を支給停止する制度です。

具体的には、「賃金」と「老齢厚生年金」の合計額が基準額を超えた場合、その超過分の半額について老齢厚生年金が支給停止となります。
なお、老齢基礎年金は調整の対象にはなりません。

基準額65万円への引き上げ

この制度は、「働けば働くほど年金が減る制度」と誤解され、高齢者の働き控えを招いているといわれていました。
そうした状況を踏まえた今回の制度改正により、2026年4月からは基準額が月65万円へ引き上げられています。
これにより、より高い収入を得ながらでも、老齢厚生年金を減額されずに受給できる人が増えることになります。

2024年の老齢厚生年金の平均受給額は15万289円です。
そのうち厚生年金部分を10万円と仮定すると、賃金46万円、老齢厚生年金10万円のケースでは、2025年度までは基準額を超える5万円の半額である2万5千円が支給停止となっていました。
しかし、2026年度以降は合計56万円が新基準額65万円以内となるため、年金は全額支給されます。 

賃金と年金の調整制度自体は残りますが、基準額の引き上げにより、年金の支給停止対象者は約50万人から約30万人へ減少するとされています。
また、支給停止にならないように働き控えをしていた方は、より多く働くことができるようになります。

活躍を促す雇用へ転換

制度見直しの背景には、平均寿命や健康寿命の延伸により、65歳以降も働き続けたいと考える高齢者が増えていることもあります。
70歳までの就業機会確保措置が努力義務となっていることを踏まえ、高齢者雇用は「年金が支給されるまでの福祉的雇用」から、「どのように活躍してもらうか」へ移行していきます。

企業が高齢者雇用により一層取り組んでいくためには、多様な働き方に柔軟に対応することが求められます。
高齢者の働き方には、個々の体力・健康状態・家庭事情が極めて大きな影響を与えます。
60代後半でもフルタイムで働ける人がいる一方、何らかの制約条件がありパートタイム勤務を希望する方もいます。

企業側が「一律の働き方」を前提にすると、本来働けるはずの人材を取りこぼすことになったり、無理をさせて労災リスクが高まるといった問題が生じる可能性があります。その結果、離職者が増加し、要員不足が生じることになります。
 

高齢社員の活用は、人的資本経営やダイバーシティ経営の観点からも重要性を増しています。
正社員とは異なる担当職務・責任範囲に基づいて待遇を決定する人事制度を設けるなど、無理なく長く働ける環境を作ることが、企業の競争力を強化することにつながります。


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<執筆者>

社会保険労務士法人ユアサイド
社会保険労務士 中宮伸二郎先生

2000年社会保険労務士試験合格。
2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。
2007年より派遣元責任者講習講師を担当し、労働者派遣や有料職業紹介などの人材サービスに詳しい。

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