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【2024年9月号】最低賃金引き上げの注意点|中宮先生によるお役立ちコラム

2024/09/10 コラム

令和6年の最低賃金引き上げで、各都道府県の引き上げ額の目安は全国一律50円とされました。
全ての都道府県で10月1日ごろから最低賃金が50円以上引き上げられます。

昨年の全国平均43円を超えて、昭和53年に目安制度が始まって以降、最高額の引き上げとなります。

みなし残業(固定残業)と最低賃金

みなし残業代は、残業手当の先払いなので最低賃金との比較に含まれない賃金です。
そのため、最低賃金以上の賃金を支払っているかどうかは、みなし残業代を含まない金額と比較しなければなりません。

<例>月給20万円(内、みなし残業代3万円) 月所定労働時間160時間の場合

令和6年10月1日以降の大阪府の最低賃金 ⇒ 1,114円

① 20万円 ÷ 160時間 = 1,250円
② (20万円-3万円) ÷ 160時間 = 1,062円

①の時給単価1,250円は、みなし残業代を含めて算出した結果、最低賃金以上となりますが、これは誤った比較です。
みなし残業代を除外して算出した②1,062円と比較しなければならず、②は最低賃金未満となり違法です。

みなし残業代や精皆勤手当を除いて最低賃金以上としなければなりません。 

社会保険8.8万円と最低賃金

令和6年10月から社会保険の加入基準が拡大され、従業員51人以上の企業では、以下の要件を満たす方を社会保険に加入させなければなりません。

◆ 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
◆ 所定内賃金が月額8.8万円以上
◆ 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
◆ 学生ではない

現在、配偶者の被扶養者としてパートで働いている方の賃金が、最低賃金の引き上げにより月収8.8万円以上となる場合、週所定労働時間が20時間以上であれば、社会保険に加入させなければなりません。

パート本人が社会保険加入を拒む場合は、「時給を引き下げて月収8.8万円未満とする」「労働時間を週20時間未満に減らす」かどちらかを選択しなければなりません。
しかし、時給の引き下げは、最低賃金が定められていることから制限が課されています

<例>兵庫県 改定前1,001円 改定後1,052円 週20時間労働は月換算で86.6時間

・改定前1,001円×86.6時間=86,686円 
⇒ 8万8千未満のため、社会保険非適用となります。

・改定後1,052円×86.6時間=91,103円
⇒ 兵庫県の従業員50人以上の企業で働く場合、週20時間以上勤務であれば、社会保険加入も必須となります。

最低賃金引き上げに伴い、うっかり下回ってしまうことがないように気をつけましょう。
また、引き上げにより社会保険加入が必要となるケースがあるので注意が必要です。



<執筆者>

社会保険労務士法人ユアサイド
社会保険労務士 中宮伸二郎先生

2000年社会保険労務士試験合格。
2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。
2007年より派遣元責任者講習講師を担当し、労働者派遣や有料職業紹介などの人材サービスに詳しい。

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